子どもに「死にたい」と言われた時の親が取るべき対応とは?

近年、子どもたちの心の健康が大きな社会問題となっています。2022年警察庁の集計では、子供の自殺者数が1980年以来過去最多となっています。

我が子の心の叫びは人ごとではありません。
本記事では、子どもから「つらい」「死にたい」という言葉を聞いた際の適切な対応方法についてまとめています。
参照:児童精神科医の井上祐紀(いのうえ・ゆうき)さんの記事、児童精神科医の岡琢哉(おか・たくや)さん、臨床心理士 福田由紀子さんの記事

親の心をまず整えよう

「死にたい」……年端もいかない我が子からそんな言葉を聞くと、親は動揺してしまうものです。悲しみや怒り、不安、やるせなさなど、色々な感情がわき起こって、果たしてこの子にどのように対応すればいいのだろうと戸惑ってしまいます。

今ここでの親である自分の対応が、子どもを更に傷つけ、最悪の事態を招いてしまったりはしないかと、怖くなるかもしれません。

「こんなに愛しているのに」「大事に育ててきたのに」という気持ちが強ければ強いほど、子どもから自分の人生を否定されるようなことを言われると、親は傷ついてしまいます。驚きのあまり「そんなことを言うもんじゃありません!」などと叱ってしまいそうにもなるでしょうが、そこはぐっと我慢しましょう。子どもには「つらい気持ちになってはいけない」と、否定や批判のように伝わってしまいます。

普通の子どもでも心に闇を抱えている場合もある

子どもの感情の内実は分からないものです。子どもの心の健康問題は、必ずしも行動上の変化として現れるとは限りません。むしろ、表面上は「普通」を保ちながら、内面で深刻な悩みを抱えていることが多いのです。

普通に学校に行ってテストも受けて、部活動もやって、本当にギリギリまで普通をある意味装っているというか、普通を保っている子たちが多いと思います。なので、学校に行けているから大丈夫という前に、『子どもが本当はどんなこと感じてるのかな?』 『子どもにとって今の生活ってどう映ってるのかな?』という目線で、想像力を働かせてとても重要です。

普段から子供の感じ方や目線を想像して、子供が「私のことを分かってくれている」というふうに思えるような関わり合いを心がけることが大切です。

忙しさがSOSを見逃してしまう

「死にたい」という言葉は、文字通りの意味ではなく、深刻なSOSのサインとして捉えるべきです。このような状況に適切に対応するためには、十分な時間と適切な環境を確保することが不可欠です。

現代社会ではゆとりを持つというのはとても難しいことですが、常に忙しい状態の親には子供も相談するのを躊躇してしまいます。

大人の役割は、子どもに教えを授けたり引っ張り上げたりすることではありません。むしろ、子どもの言葉にならない感情や記憶を一緒に探り、理解していき「言語化」してあげる存在であることが求められます。

重要なのは、単に「いつでも話してね」と言うだけでなく、実際に子どもの話を聞く時間と心のゆとりを持つことを心がけましょう。

評価やアドバイスは一旦ストップ!

子どもが「つらい」と訴えた時、つい大人の価値基準で評価を下したり、アドバイスをしたくなったりします。しかし、そうした対応を控え、まずはその子がどう感じているかを認めてあげることが大切です。

いま世の中には、いろいろな優しい言葉や見栄えの良い言葉が溢れています。しかし、本当に必要なのは、『言葉』ではなく、そうした姿勢を示し、時間を共に過ごすことだと思います」

まずは「死にたい」「つらい」という気持ちを受け止めることに専念しましょう。子どもの置かれている状況を知ろうとして、詳細を聞き出そうとするのは、後にしましょう。感情が大きく揺れ動いている時に、我が身に起こったことを客観的に表現することのできる人は、大人でも少ないでしょう。

「そう。死にたいと思ってしまうくらい、つらいんだね」これをまず、しっかり言葉に出して伝えることが大切です。高ぶった気持ちが落ち着いてきたら、子どもは自分に起こった出来事を、ポツリポツリと話し始めるでしょう。

この状況を変えるには何か方法があるはず。それを一緒に考えよう!と声がけをしてあげましょう

何があっても味方だと子供に伝えよう

子どもが親であるあなたに対して「死にたい」と打ち明けたのは、あなたが子供に寄り添い、子供の安全基地として機能しているという何よりの証拠です。死にたいほどの悩みをあなたに打ち明けてくれたことに「話してくれてありがとう」と声に出して伝えてあげましょう。

そして、「何があっても味方だよ」とか「力になりたい」と、しっかり目を見て伝えましょう。「そんなにつらい思いをしていたことに、気づかなくてごめん」と率直に謝るのもいいでしょう。「言葉で伝えること」、これが大事です。

子どもが、悪いことをしているかもしれません。しかし、その反省も命があるからこそできるのです。落ち着いてから行動を省みることもできます。まずは目の前の緊急事態の収拾を急ぎましょう。

「死にたい」を「死なない」に変える

子どもが少し落ち着き、話が一段落したら「私はあなたに死んでほしくないよ。生きていてほしいよ。死なないって、約束してくれる?」とたずねましょう。たとえ前向きに考えられるようになりつつあったとしても、子どもが「死にたい」と言ったことを、なかったことにしないようにしましょう。

「死なない?」という問いかけに頷いたら、「声に出して、死なないって言って。死なないって約束して」と、言葉にすることを求めましょう。

言葉に出して「死なない」と約束し、その声を子どもが自分で聞くことが大切なのです。私たちは、自分が声に出して言ったことに対して、責任を持とうとするからです。

「死にたい」は「生きたい。でも、どうやって生きていけばいいのかわからなくて、つらい」というSOSだと思って対応しましょう。

子どもは本当に死にたいわけではありません、現在の苦しい状況から逃れたいと思っていることが多いのです。つまり、生きたいという根本的な願望を持ちながらも、現状では生きることが困難だと感じているのです。

具体的な支援の方法

子どもが「死にたい」と言った時、即座に問題解決を図ろうとしたり、アドバイスを与えたりするのは適切ではありません。まず必要なのは、子どもに「一人ではない」ということを感じさせることです。

さらに、たとえ10分や20分という短い時間でも、「死にたい」という気持ちを忘れさせる時間を作ることが重要です。これは、一時的にでも子どもを苦しい思いから解放し、新たな視点を得るきっかけとなる可能性があります。

マイナスな状態から、0の状態になれるようにケアを行なっていきましょう。

まとめ

子どもの心の健康を守るための重要なポイントは以下の通りです:

  1. 子どもの感情をそのまま受け止める
  2. 受け止める姿勢を重視し、時間とゆとりを持つ
  3. 評価やアドバイスは控えめにし、まず気持ちを認める
  4. 個々の状況の違いに注目し、子どもの視点で考える
  5. 「死にたい」の真意を理解し、生きる希望を見出す
  6. 一人ではないことを伝え、一時的にでも気持ちを和らげる

子どもの心の問題に対して、即効性のある解決策はありません。必要なのは、子どもの気持ちに寄り添い、じっくりと向き合う時間と姿勢です。

親や保護者の皆さんへのメッセージ

  1. 安全基地としての役割を果たす:子どもが「死にたい」と打ち明けたことは、あなたへの信頼の証です。この信頼関係を大切にし、常に子どもの味方であることを示し続けてください。
  2. 言葉で伝える重要性:「話してくれてありがとう」「何があっても味方だよ」「生きていてほしい」など、あなたの思いを言葉にして伝えることが非常に重要です。
  3. 「死なない」約束をする:子どもが落ち着いたら、「死なないって約束して」と言葉に出してもらいましょう。この行為が子どもの生きる意志を強めることがあります。
  4. 専門家のサポートを受ける:一人で抱え込まず、必要に応じて学校のカウンセラーや精神保健の専門家に相談することも検討しましょう。
  5. 自身のケアも忘れずに:子どもを支えるあなた自身の心身の健康も大切です。必要に応じて周囲のサポートを受けることを躊躇わないでください。

私たち大人には、子どもたちの心の声に耳を傾け、彼らの成長を見守り、支える責任があります。一人ひとりが子どもの心に寄り添う姿勢を持つことで、子どもたちがより健やかに、そして強く成長できる社会を作っていくことができるでしょう。

そして、子どもたちに「あなたは一人じゃない」「あなたの命は大切」というメッセージを伝え続けることが、彼らの命を守る最も重要な一歩となります。子どもたちの未来のために、今、私たちにできることから始めていきましょう

       おしょー監督のプロフィール写真(大友頌平)
           
大友頌平
           
株式会社ChillDog代表。国内エアラインの航空整備士・フリーランスエンジニア・カメラマン・動画クリエイター・エンジェル投資家の付き人など20代で多様な領域を経験。生きていく中で人に支えられることの素晴らしさに気づき、未経験だった福祉事業へと参入。日々学びながら東奔西走中。

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