今回は子育ての豆知識、三つの発達理論について解説していきます。
目次
【遺伝論】ゲゼルによる成熟説・成熟優位説
ゲゼル(Geseell,A.:1880~1961年)は、発達を決定する要因として、遺伝的要因を重視した「成熟説」の提唱者です。
双子の階段登り実験
生後46週の双子の子供の一方に4・5段ほどの階段を上る練習を6時間実施。その結果、52週目には26秒で階段を上ることができるようになった
一方で52週目まで練習していなかった方の子どもに階段登りをさせると45秒かかってしまった。しかし、練習をしていなかった子供にも52週から階段登りの練習をさせると、2週間の練習によって10秒で上れるようになってしまった。
もちろん、46~52週までの練習もそれなりの効果があったわけですが、52週から始めた練習は非常に効果的であったといえます。
つまり、十分に成長・成熟した後でないと、効果的な学習は出来ないというのがゲゼルの結論であり、発達に決定的に影響を持っているのは遺伝的要因であるという「成熟優位説」を主張したのです。
遺伝論においては「レディネス(発達準備が整った成熟状態)」が成立してからの学習が重要だとされている
語呂合わせ:レディが下世話(ゲゼル)な遺伝論
【環境論】ワトソンによる学習優位説・経験説
行動主義の心理学を創設したアメリカの心理学者であるワトソン(Watson,J.B.:1878~1958年)は、自分に子どもを預けてくれるならばどんな職業にでもしてみせるといったことで有名です。
人には生得的(本来備わっている 先天的なもの)な遺伝的要因の違いはなく、人間の知性は経験による学習によってのみ習得されていくという経験重視の考え方を元にしています。
このワトソンの極端な説は、遺伝的要因を排除したことにより、後天的な学習の重要性が認識されるのに大きく貢献したのです。
ブロンフェンブレナーによる生態学的システム
環境を、人に直接働きかける最小限の要素「マイクロシステム」、複数の要素間の関係「メゾシステム」、直接関係しないが影響を与えるもの「エクソシステム」、社会や文化「マクロシステム」、時間の影響・経過「クロノシステム」といったように重層的に捉える、ブロンフェンブレナーの生態学的システムという考え方もある
語呂合わせ:ブロンズ(ブロン)、変(フェン)だよ、ぶれんな〜、正体(生態)がっくりシステム(学的システム)
【輻輳説】シュテルンによる輻輳説
シュテルン(Stern,W.:1871~1938年)が提唱した輻輳説は、「遺伝的要因」と「環境的要因」が加算的に働き、発達が決まるという考え方です。
遺伝的要因と環境的要因を図式化し、半々が影響を与えているということを示しています。
語呂合わせ:服でシュテルンって滑った!
【相互作用説】ジェンセンによる環境閾値説
初期の相互作用説としてアメリカの心理学者ジェンセン(Jensen,A.R.:1923~2012年)が、1960年代に発表した「環境閾値説」があります。ジェンセンは、発達に対する遺伝的要因が実際に発現するためには、必要としている環境的要因の程度があり、それを環境閾値を呼びました。
人間の発達は遺伝的要因と環境的要因の掛け算のように互いに影響を与えながら関係していくという、現在最も一般的な考え方である。
語呂合わせ:ジェントルマンは相互フォロー
ギブソンのアフォーダンス
環境や物と子供の間に存在する関係そのものが意味を提供しているという「ギブソン」のアフォーダンスという考え方もある。
子供は「環境に埋め込まれた意味(アフォーダンス)」を見出して行動するという考え方です。
例)扉にドアノブがついているという環境から、扉を開けることができるという意味を見出すことができる。
語呂合わせ:アホだからギブです